ski経営サポートオフィスの社労士コラム

【10:労基署の調査、是正勧告】記事一覧

長時間残業で国が初めて会社名を公表

2016.05.21

ブラック企業対策で企業名を公表

このほど、千葉市にある卸売業の代行会社で、従業員63人に月100時間を超える残業をさせていたとして、国が企業名を公表しました。

厚生労働省は、長時間労働の対策として、行政指導の段階で企業名を公表するという方針を出していましたが、実際に公表されたのはこれが初めてです。

厚生労働省によると、この会社の4つの営業所でこの1年間に4回是正勧告を行ったということで、違法な長時間労働が繰り返されていると判断して、企業名を公表しました。

このような話をすると「タイムカードなど廃止して時間が分からないようにすればいい。」という経営者の方がいますが、現実はそんなに甘くありません。

平成27年の監督指導事例で以下のような事例があります。

監督指導事例(卸売業)

  1. 始業・終業時刻を全く把握しないまま、36協定の締結・届出をせず、複数の労働者に月約100時間の違法な時間外労働を行わせるとともに、割増賃金を全く支払っていなかった事業場に対し指導を実施
  2. 上記1以外の同一の企業に属する他の複数の事業場においても、始業・終業時刻を全く把握していないなど、同様の法違反の問題が生じているおそれがあると認められたことから、全社的な指導を実施
監督指導によって把握した事実
  1. 会社は、労働者の始業・終業時刻を全く把握せず、労働時間の管理を適正に行っていなかったが、パソコンのログイン・ログオフ時刻の確認や労働者からの勤務実態等についての聴取の結果、複数の労働者に月約100時間の時間外労働を36協定の締結・届出なく行わせていたことが明らかとなった。
  2. 時間外労働の実態を全く把握していなかったことを理由として、割増賃金を全く支払っておらず、また、賃金台帳に時間外労働時間数等を記入していなかった。
  3. 他の複数の事業場においても、労働者の始業・終業時刻を全く把握していなかったことから、同様に労働時間の管理が適切に行われておらず、労働時間に関する問題が生じているおそれがあった。

この会社は時間の管理を全く行っていませんでいたが、労働基準監督署に実態を把握されて是正勧告されています。

企業名の公表は全国展開するような大企業に向けた措置ですが、時間をごまかすのではなく、長時間の残業を減らす努力をする必要に迫られています。

自動車運送業への監督指導と送検の状況

2016.01.16

長野県軽井沢町で不幸なスキーバスの転落事件が起きてしまいました。報道によるとこの会社は、従業員に法定の健康診断を受けさせていなかったということです。

平成27年12月25日付で、厚生労働省から、トラック、バス、タクシーなどの自動車運送業者へ行った労働局と労働基準監督署の監督指導と送検の状況が公表されています。

監督指導状況

労働基準関係違反

これによると、平成26年に監督指導を行った事業所数は、3,907事業所で、その内労働基準関係の法違反がみられたのは、3,240事業所と82.9%にのぼっています。内訳をみると、タクシー(ハイヤー含む)87.3%、トラック83.6%、バス74.4%となっています。

改善基準違反

違反事項については、多い順に、労働時間56.0%、割増賃金24.3%、休日6.4%となっています。

次に改善基準に関しての違反は、3,907事業所中2,373事業所と60.7%で、多い順にトラック66.7%、バス56.1%、タクシー41.0%となっています。

違反事項については、最大拘束時間48.3%、総拘束時間38.3%、休息時間35.3%の順となっていいます。

事例
  1. トラック運転手の事例で、6週間休みが全くとれていない、1か月の拘束時間(勤務時間と休憩時間を合わせた時間)が400時間を超えていた(原則は1か月293時間)
  2. トラック運転手の事例で、1か月の拘束時間が約500時間、その翌月は約400時間、また8時間以上の休息時間を与えていなかった。
  3. バス運転手の事例で、4週を平均して1週間当たりの拘束時間が約80時間以上(原則65時間)で、1日の拘束時間が16時間を複数回超えていた、連続運転時間が4時間を超えていた。
  4. タクシー運転手の事例で、月給を時間あたりに直すと最低賃金を下回っていた。賃金が完全歩合制で、水揚げに応じて支給割合が上がる累進歩合給制になっており、保障給も定めていなかった。

送検状況

また、重大または悪質な違反として送検を行ったのは56件で、トラック40件、タクシー6件、バス3件とトラックが断トツで多くなっています。

事例
  1. トラック運転手の事例で、運転手2名の脳・心疾患(うち1名は死亡)を発生させた事業所では、全体の約9割に当たる70名に対し、1か月100時間を超える残業を行わせており、平均約150時間、最長で220時間を超える残業があった。36協定の限度の120時間を超えており、重大な法違反であるとし、法人と事業主を送検。
  2. タクシー運転手の事例で、脳梗塞を発症した運転手に対し、3か月90時間の残業と56日間連続勤務を含む休日出勤をさせていたことから、重大な違反であるとして法人と役員を送検。36協定も有効なものではなかった。
  3. トラック運転手の事例で、運転手に対して、最大12tの大型貨物自動車の荷台で保護帽を被らずに作業させていた際、荷台から転落し、脳挫傷により意識不明の重体となった。運転者に対し、危険を防止する措置が取られていないことから、重大な法違反として法人と営業所長を送検。
  4. トラック運転手の事例で、高さ3.4mのトラック荷台の屋根の補修作業をさせていた際に、運転手が転落し、死亡した。屋根までの昇降設備はなく、また、転落防止措置もとられていなかったことから、重大な法違反であるとして法人と代表者を送検。

地方運輸局と労働労働基準監督機関が、相互に通報しあっており、合同監督や監査なども始まっています。人材不足や荷主からの要求など難しい問題もありますが、運転手・ドライバーの労働環境の向上か求められています。

労働基準監督署への相談

2015.12.05

長時間労働・残業代不払い・有給休暇が取れない

最近、どこの労働基準監督署に行っても、必ず労働相談をしている人を見かけるようになりました。

そんな状況を受けてか、このたび「過重労働解消相談ダイヤル」と「労働条件相談ほっとライン」の相談結果が厚生労働省から発表になりました。

「過重労働解消相談ダイヤル」は、都道府県労働局の職員が直接相談を受け付けるもので、平成27年11月7日土曜日に実施され、488件の相談が寄せられました。

「労働条件相談ほっとライン」は、委託事業として平日夜間と土日に無料で相談を受け付け、4月1日から11月7日までの約7か月間に16,788件の相談が寄せられました。

相談の内容は、長時間労働・過重労働、賃金不払残業、休日・休暇についてのものが多く「過重労働解消相談ダイヤル」では、488件の内、長時間労働・過重労働が236件と半分近くを占め、次いで賃金不払残業が218件、休日・休暇についてが40件でした。

また、「労働条件相談ほっとライン」では、16,788件の内、休日・休暇が1,366件、賃金不払残業が1,250件、長時間労働・過重労働が690件となっています。

特に深刻なものについて、事例が掲載されています。

長時間労働・過重労働の事例

製造業
  • 年間通して1か月100時間を超える者や、1か月160時間を超える者がいる。安全衛生委員会で、社長に対し、衛生管理者や産業医から残業時間の状況を報告し、長時間労働の削減に向けた対策を求めても、当事者意識がなく、一向に対策が講じられない
病院用給食の製造と配達
  • 正社員、パート、アルバイトなどの立場に関係なく1か月200時間程度の残業をしている。体調を崩さないか心配。
トラック運転手
  • 1か月100時間以上の残業をしている。労働時間は運転日報で管理しているが、日報には、過少申告の記載をすることが当たり前となっており、 実際の労働時間が適正に把握されていない。
証券会社の営業
  • ほとんど毎日4時間以上残業しており、その上、本社や支店長からの命令で、営業実績を上げるよう本来休日である土曜日も毎週出勤しているため、残業時間は1か月100時間を超えている。
コールセンターのオペレーター
  • 1か 月140時間程度の残業をしている。会社は、1か月100時間を超える残業を行った者に対して、 医師による面接指導制度を実施することとしているが、自ら申し出たにも関わらず、医師による面接指導を実施してもらえなかった。

賃金不払残業

食料品の製造
  • 毎日午前6時から翌日午前2時くらいまで働いており、1か月200時間を超える残業をしているが、労働時間が管理されておらず、残業手当は一切支払われない。また、健康診断も実施されていない。事業場内では、長時間労働によりうつ病をになり、自殺した従業員もいるようだ。
葬儀社の営業
  • ほとんど休憩時間が取れず、1か月300時間を超える残業をしている。また、労働時間はタイムカードで管理しているが、始業時間のみタイムカードを打刻し、 終業時間はタイムカードに判子を押すだけで、適正に把握されておらず、1日当たり4000円の宿直手当が支払われるのみで、残業手当は一切支払われない。
証券会社のマネージャー
  • 1か月100時間を超える残業をしている。 残業時間は自己申告制だが、マネージャーというのは名前だけで、責任や権限が何もないにも関わらず、実際の残業時間数を申告しても、毎月役職手当として3万円支払われるだけで、残業手当が一切支払われない。
システムエンジニア
  • 入社当初より毎日午後11時くらいまで働いており、1か月80時間を超える残業をしている。 労働時間は管理されておらず、残業手当は一切支払われない。
グループホームのヘルパー
  • 午後9時から午前6時までは仮眠時間とされている。しかし、実際は、夜勤の職員が1名しかおらず、仮眠時間とされている時間もほとんど働いている。そのため、1か月100時間を超える残業をしているが、仮眠時間に働いた分の残業手当は一切支払われない。
レストランの料理長

1日20時間働くこともあり、1か月200時間を超える残業をしている。また、休日は1日もない。労働時間はタイムカードにより管理しているが、残業時間の途中でタイムカードを強制打刻させられるため、月100時間程度分しか残業手当が支払われない。

休日・休暇

パン工場
  • 年間通して1か月150時間を超える残業をしている。 休日は、大晦日と元旦の2日しかなく、年次有給休暇も取得できない。残業手当として毎月8万円支払われるが、100時間分以上の残業手当が不足している。
工場
  • 10年間継続勤務しているが、上司から、準社員に年次有給休暇はないと言われ、取得を認めてもらえない。
建設現場監督
  • 午前3時から午後10時まで働いており、1か月200時間を超える残業をしている。また、数か月間休日がなく、前に休んだのは4ヶ月前。
電気工事士
  • 年次有給休暇の取得を申し出ると、毎回その理由を尋ねられ、理由を告げても取得を認めてもらえない。
警備員
  • 年次有給休暇を請求すると、他の休日に出勤させられ、休日の振替として処理されるだけで、年次有給休暇を取得していないものとされている。

「寄せられた相談のうち、労働基準関係法令上、問題があると認められるケースについては、労働基準監督署に情報提供を行い、監督指導を実施するなど、必要な対応を行います。」とされています。

飲食業や小売業、介護事業などは、特に指導の対象とされており、このようなケースに当てはまるようなら、早急に対処する必要があります。

無料相談のお申し込みはこちら