ski経営サポートオフィスの社労士コラム

【04:労働災害が発生したら】記事一覧

電通の女性社員の過労死

2016.10.15

電通の女性社員が去年12月に自殺し、今年9月30日に労災認定されました。

このところ過労死に関連した裁判が相次いでいることもあり、過労死について考えてみたいと思います。

過労死に関係した裁判は、2011年5月の「日本海庄」事件や2015年12月に和解が成立した「ワタミ過労自殺訴訟」などが有名ですが、経営者の長時間労働の放置に対して、厳しい責任追及される時代になったと言えると思います。

厚生労働省から「過労死等防止対策白書」が発表されています。

それによると過労死等とは、過労死等防止対策推進法第2条により次のように定義されています。

  1. 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
  2. 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
  3. 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害

また、調査結果から、過労死ラインと言われている正規雇用者の法定外の残業時間が80時間超だった企業の割合は、多い順に、①情報通信業(44.4%)、②学術研究、専門・技術サービス業(40.5%)、③運輸業、郵便業(38.4%)となっています。

残業が発生する理由は、「業務量が多いため」、「人員が不足しているため」、「業務の繁閑の差が大きいため」となっており、この内「人員が不足しているため」を上げる業種としては宿泊業、飲食サービスが最も多くなっています。

疲労の蓄積度、ストレスの状況の調査では、

疲労の蓄積度が「高い(高いと非常に高いの合計) 」と判定される者の割合が高い業種は、順に

①宿泊業,飲食サービス業(40.3%)、②教育,学習支援業(38.9%)、③運輸業,郵便業(38.0%)となっており、

ストレスが「高い 」と判定される者の割合の高い業種は、順に

①医療、福祉(41.6%)、②サービス業(他に分類されないもの)(39.8%)、③卸売業、小売業(39.2%)、③宿泊業、飲食サービス業(39.2%)となっています。

対策として、

  1. 週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下
  2. 年次有給休暇取得率を70%以上
  3. メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合80%以上

を目指すとしています。

これらの対策には助成金の対象になるものもあり、時短に取り組んでみてはいかがでしょか?

労災のケガなのに健康保険を使ってしまった場合は

2014.01.08

従業員が仕事中にケガをしたのに、労災保険ではなく医療機関の窓口で健康保険証を出して治療を受けてしまったということは時々耳にしますが、この場合どのように対処すればいいのでしょうか?

治療を受けた医療機関に、今からその治療を健康保険から労災保険に切り替えられるかどうか確認をしてもらう必要があります。

切り替えができる場合

切り替えができる場合には、比較的簡単です。医療機関の窓口で、3割払った医療費を返還してもらってください。そして、変わりに労災保険の用紙を提出することになります

業務災害の場合は、5号様式(療養補償給付たる療養の給付請求書)を、通勤災害の場合は、第16号の3様式(療養給付たる療養の給付請求書)を提出します。

切り替えられない場合

切り替えられない場合は、治療費のすべてを一旦、本人に立て替えてもらいます。これは協会けんぽに対しての立て替えになります。

具体的には

  1. 協会けんぽに連絡をし、受けた治療について労働災害であったことを伝えます。すると、協会けんぽから医療費返納の通知書と納付書が送られてきます。
  2. その後、送られてきた納付書で7割分の医療費を返納することになります。                つまり、既に医療機関の窓口で支払った3割とこの7割で、全額立て替えをしたことになります。返納すると協会けんぽから領収書が届きますので、その後労災保険への請求をすることとなります。
  3. 7号様式(療養補償給付たる療養の費用請求書)を記載した上で、返納金の領収書と医療機関の窓口で支払った3割分の領収書を添付して労働基準監督署へ提出することになります。これはいずれも原本の提出になります。
  4. 労働基準監督署に提出した後は、その内容が確認され、7号様式に記載された金融機関の口座に医療費の10割の額が振り込まれることになります。

医療機関は診療報酬明細書(レセプト)を協会けんぽに送って、保険請求をし、7割分を支払ってもらうことになりますが、このレセプトが協会けんぽに届くまでに受診から2~3ヶ月程度かかるようです。

つまり、労働災害と連絡しても、このレセプトが届いていないと返納の通知ができず、労災保険への請求もできないことになります。

なお、切り替えの際に協会けんぽから負傷原因報告書に負傷原因を記入するように求められることがあるほか、医療費の請求について、レセプトの写しが必要になる場合があります。

労災保険が適正でない場合は

2012.02.03

不服申し立て

  • 「不服申し立て」は、被保険者の資格、保険料、保険給付などの決定や処分に対して、労働者の権利の保護や救済を図るための制度です。
  • 労働保険に関する「不服申し立て」は、保険給付の場合とそれ以外の2つの方式に分かれています。

1.保険給付についての審査請求

  1. 審査請求は、労災の保険給付に関するものは、都道府県労働局の「労働者災害補償保険審査官」に、失業保険の給付に関するものは「雇用保険審査官」に対して行います。この両方を総称して「労働保険審査官」といいます。
  2. 審査請求は、原則、保険給付に関しての決定があったことを知った日から60日以内に行わなければなりません。(口頭でも可)
  3. 代理人によって行うこともできます。

再審査請求

  1. 審査請求の結果に不服がある場合、厚生労働省の「労働保険審査会」に対して、再審査請求をすることができます。
  2. 再審査請求は、審査請求についての決定書の謄本が送付された日の翌日から60日以内に、文書で行わなければなりません。

訴訟

  1. 再審査請求の裁決に対しても不服がある場合は、裁決があったことを知った日から6か月以内に、管轄区域の地方裁判所に対して、処分の取り消しの訴えを起こすことができます。
  2. 提訴は、労働保険審査会の裁決後に行うのが原則ですが、再審査請求をした日の翌日から3か月たっても結果が出ていない場合に、裁決を待っているとより著しい損害を避けるために必要な場合等には、裁決前でも行うことができることになっています。

2.保険給付以外のものに関する審査請求

  1. 審査請求は厚生労働大臣以外の機関が行う処分について行うことができます。
  2. この審査請求は、労働基準監督署長の処分については都道府県労働局長、都道府県労働局長の処分については厚生労働大臣に対して、処分があったことを知った日の翌日から60日以内に、文書で行わなければなりません。
  3. 異議申し立てをすることができる処分については、異議申し立てを行い決定があった後でなければ、審査請求をすることができません。異議申し立ての決定があったことを知った日の翌日から30日以内に審査請求を行います。
  4. 審査請求をした行政庁の上級行政庁がある場合、再審査請求をすることができます。

異議申し立て

  1. 異議申し立ては、処分行政庁に上級行政庁が無い場合、処分庁が各省庁の大臣か長官のとき、又は法律に定めがあるときに行うことができます。
  2. 異議申し立ては、処分があったことを知った日の翌日から60日以内に、文書でその処分をした行政庁に対して行います。
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