ski経営サポートオフィスの社労士コラム

「日本海庄や」店員過労死問題

2013.10.06

 飲食チェーン店「日本海庄や」の店員だった男性当時(24)が死亡したのは長時間労働が原因として、京都市の両親が同店などを全国展開する大庄と社長ら役員4人に計約1億円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁による判決が出ました。

 男性は07年4月に同社へ入社し、大津市の店舗で勤務。同年8月に急性心不全で死亡し、死亡前4カ月間の時間外労働は月平均100時間を超え、08年12月に労災認定されていました。

  以下その概略です。

判決要旨

 飲食店従業員が急性左心機能不全により死亡した事案につき、会社に対し、安全配慮義務違反による損害賠償責任を認めるとともに、会社の取締役に対し、長時間労働を前提とした勤務体系や給与体系をとっており、労働者の生命・健康を損なわないような体制を構築していなかったとして会社法429条1項に基づく責任を認めた事例

  1. 被告会社は、原告(両親)Aに対し、3929万4874円およびこれに対する平成19年8月11日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  2. 被告会社は、原告(両親)Bに対し、3933万2564円及びこれに対する平成19年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  3. 被告C、被告D、被告E及び被告F(役員4人)は、原告Aに対し、連帯して3929万4874円及びこれに対する平成21年1月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  4. 被告C、被告D、被告E及び被告Fは、原告Bに対し、連帯して3933万2564円及びこれに対する平成21年1月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

  以下省略

被告会社の責任

 使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う。そして、この義務に反した場合は、債務不履行を構成するとともに不法行為を構成する。

 被告会社は、労働者であるG(原告らの子)を雇用し、自らの管理下におき、業務に従事させていたのであるから、Gの生命・健康を損なうことがないよう配慮すべき義務を負っていたといえる。具体的には、Gの労働時間を把握し、長時間労働とならないような体制をとり、一時、やむを得ず長時間労働となる期間があったとしても、それが恒常的にならないよう調整するなどし、労働時間、休憩時間及び休日等が適正になるよう注意すべき義務があった。

 被告会社では、給与体系において、本来なら基本給ともいうべき最低支給額に、80時間の時間外労働を前提として組み込んでいた。また、三六協定においては1か月100時間を6か月を限度とする時間外労働を許容しており、実際、特段の繁忙期でもない4月から7月までの時期においても、100時間を超えるあるいはそれに近い時間外労働がなされており、労働者の労働時間について配慮していたものとは全く認められない。また、Gについては被告会社に入社以後、健康診断は行われておらず、Gが提出した健康診断書は、被告会社への入社1年前に大学で実施した簡易なものであり、被告会社の就業規則で定められていたことさえ守られていなかった。

 そして、労働者の労働時間を把握すべき部署においても、適切に労働時間は把握されず、1か月300時間を超える異常ともいえる長時間労働が常態化されており、Gも前記のとおりの長時間労働となっていたのである。それにもかかわらず、被告会社として,そのような勤務時間とならないよう休憩・休日等を取らせておらず、何ら対策を取っていなかった。

 以上のことからすると、被告会社が、Gの生命、健康を損なうことがないよう配慮すべき義務を怠り、不法行為上の責任を負うべきであることは明らかである。

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