ski経営サポートオフィスの社労士コラム

【09:残業代の請求】記事一覧

労働基準監督署への相談

2015.12.05

長時間労働・残業代不払い・有給休暇が取れない

最近、どこの労働基準監督署に行っても、必ず労働相談をしている人を見かけるようになりました。

そんな状況を受けてか、このたび「過重労働解消相談ダイヤル」と「労働条件相談ほっとライン」の相談結果が厚生労働省から発表になりました。

「過重労働解消相談ダイヤル」は、都道府県労働局の職員が直接相談を受け付けるもので、平成27年11月7日土曜日に実施され、488件の相談が寄せられました。

「労働条件相談ほっとライン」は、委託事業として平日夜間と土日に無料で相談を受け付け、4月1日から11月7日までの約7か月間に16,788件の相談が寄せられました。

相談の内容は、長時間労働・過重労働、賃金不払残業、休日・休暇についてのものが多く「過重労働解消相談ダイヤル」では、488件の内、長時間労働・過重労働が236件と半分近くを占め、次いで賃金不払残業が218件、休日・休暇についてが40件でした。

また、「労働条件相談ほっとライン」では、16,788件の内、休日・休暇が1,366件、賃金不払残業が1,250件、長時間労働・過重労働が690件となっています。

特に深刻なものについて、事例が掲載されています。

長時間労働・過重労働の事例

製造業
  • 年間通して1か月100時間を超える者や、1か月160時間を超える者がいる。安全衛生委員会で、社長に対し、衛生管理者や産業医から残業時間の状況を報告し、長時間労働の削減に向けた対策を求めても、当事者意識がなく、一向に対策が講じられない
病院用給食の製造と配達
  • 正社員、パート、アルバイトなどの立場に関係なく1か月200時間程度の残業をしている。体調を崩さないか心配。
トラック運転手
  • 1か月100時間以上の残業をしている。労働時間は運転日報で管理しているが、日報には、過少申告の記載をすることが当たり前となっており、 実際の労働時間が適正に把握されていない。
証券会社の営業
  • ほとんど毎日4時間以上残業しており、その上、本社や支店長からの命令で、営業実績を上げるよう本来休日である土曜日も毎週出勤しているため、残業時間は1か月100時間を超えている。
コールセンターのオペレーター
  • 1か 月140時間程度の残業をしている。会社は、1か月100時間を超える残業を行った者に対して、 医師による面接指導制度を実施することとしているが、自ら申し出たにも関わらず、医師による面接指導を実施してもらえなかった。

賃金不払残業

食料品の製造
  • 毎日午前6時から翌日午前2時くらいまで働いており、1か月200時間を超える残業をしているが、労働時間が管理されておらず、残業手当は一切支払われない。また、健康診断も実施されていない。事業場内では、長時間労働によりうつ病をになり、自殺した従業員もいるようだ。
葬儀社の営業
  • ほとんど休憩時間が取れず、1か月300時間を超える残業をしている。また、労働時間はタイムカードで管理しているが、始業時間のみタイムカードを打刻し、 終業時間はタイムカードに判子を押すだけで、適正に把握されておらず、1日当たり4000円の宿直手当が支払われるのみで、残業手当は一切支払われない。
証券会社のマネージャー
  • 1か月100時間を超える残業をしている。 残業時間は自己申告制だが、マネージャーというのは名前だけで、責任や権限が何もないにも関わらず、実際の残業時間数を申告しても、毎月役職手当として3万円支払われるだけで、残業手当が一切支払われない。
システムエンジニア
  • 入社当初より毎日午後11時くらいまで働いており、1か月80時間を超える残業をしている。 労働時間は管理されておらず、残業手当は一切支払われない。
グループホームのヘルパー
  • 午後9時から午前6時までは仮眠時間とされている。しかし、実際は、夜勤の職員が1名しかおらず、仮眠時間とされている時間もほとんど働いている。そのため、1か月100時間を超える残業をしているが、仮眠時間に働いた分の残業手当は一切支払われない。
レストランの料理長

1日20時間働くこともあり、1か月200時間を超える残業をしている。また、休日は1日もない。労働時間はタイムカードにより管理しているが、残業時間の途中でタイムカードを強制打刻させられるため、月100時間程度分しか残業手当が支払われない。

休日・休暇

パン工場
  • 年間通して1か月150時間を超える残業をしている。 休日は、大晦日と元旦の2日しかなく、年次有給休暇も取得できない。残業手当として毎月8万円支払われるが、100時間分以上の残業手当が不足している。
工場
  • 10年間継続勤務しているが、上司から、準社員に年次有給休暇はないと言われ、取得を認めてもらえない。
建設現場監督
  • 午前3時から午後10時まで働いており、1か月200時間を超える残業をしている。また、数か月間休日がなく、前に休んだのは4ヶ月前。
電気工事士
  • 年次有給休暇の取得を申し出ると、毎回その理由を尋ねられ、理由を告げても取得を認めてもらえない。
警備員
  • 年次有給休暇を請求すると、他の休日に出勤させられ、休日の振替として処理されるだけで、年次有給休暇を取得していないものとされている。

「寄せられた相談のうち、労働基準関係法令上、問題があると認められるケースについては、労働基準監督署に情報提供を行い、監督指導を実施するなど、必要な対応を行います。」とされています。

飲食業や小売業、介護事業などは、特に指導の対象とされており、このようなケースに当てはまるようなら、早急に対処する必要があります。

中小企業も平成31年度から残業割増50%へ

2015.02.14

 中小企業も残業代が50%割増に

 中小企業では、月60時間を超える時間外労働について割増率50%の適用を猶予されていましたが、平成31年度からこの猶予が廃止になる見込みです。

 これにより中小企業も時間外労働について月60時間を超える場合は、50%増の割増賃金をはらわなければいけなくなります。

 飲食、運輸、宿泊、IT業界など残業の多い業界を中心に対策が必要となっています。

 経営者としては「時間を短縮しても売り上げが下がらなければいい」というのが本音ではないでしょうか?

 この対策について、厚生労働省の「働き方・休み方改善ハンドブック」によると

  1. 休日を確実に休む
  2. 有給休暇を取得する
  3. 労働時間を把握する
  4. 「ムダ」の削減
  5. 業務改善
  6. 応援体制の整備
  7. 経営改革

の7つが必要だとしています。

 ただ単に時間短縮だけに取り組んでも無理が生じ、サービスの質の低下や取組の形骸化がおこり、かえって従業員の負担が増えることにつながります。以下企業の様々な取り組みを上げておきます。参考にしてください。

取り組み事例

  1. 長時間労働の原因を把握し、改善策を立てている・・・実態を把握して、原因を分析することにより、効果的な改善策を立てることができる。
  2. ノー残業デーを設けている・・・形骸化しないよう工夫も必要
  3. 帰りやすい・休みやすい雰囲気をつくっている・・・まずは上司が率先することで、職場の空気が変わる。
  4. 時間に区切りを付けている(チャイムを鳴らす、夕礼の実施など)・・・所定勤務時間の終了を意識することが大切。
  5. 管理職を対象に労務管理に関するセミナーを行っている・・・マネージャの労務管理能力を高めることが重要。
  6. 長時間労働を抑制するために、職場を巡回している・・・直接声をかけることで、大きな効果が見られる。
  7. 長時間労働を行った者に対して、部門長や人事部などが面談を行っている・・・面談により、問題点が明らかとなったり、効果的な対策を取ることができる。
  8. 部門長が、メンバーの業務内容やプロジェクトの進捗状況を把握している・・・仕事を独りだけで抱え込ませないようにする。
  9. 時間外労働、年次有給休暇取得などを「見える化」している・・・「見える」ことで、自分も周りも意識が変わる。
  10. 時間外労働、休日出勤などを申請制にし、部門長の承諾が必要としている・・・本当に必要な場合にしか時間外労働をしない、させない、という意識が大切。
  11. 本人や部門長に、メールや文書で長時間労働の注意喚起(アラート)をしている・・・「気付かないうちに長時間労働・・・」ということを防ぐ。
  12. 時間外労働削減のためのインセンティブ(動機づけ)を設けている・・・意識を高める効果が大きい。
  13. 年次有給休暇を計画的に取得する仕組みがある・・・会社や部門を休業にしたり、個人が計画を立てたり、実態に応じた方法が高い効果を上げている。
  14. 1週間程度の休みが取得できる連続休暇制度やリフレッシュ休暇制度などがある・・・制度を設けるだけでなく、取得を促すことにより、定着する。
  15. 記念日休暇、配偶者出産休暇など、従業員が利用しやすい制度がある・・・思い出と共に・・・大切な休日になる。
  16. 半日休暇・時間単位休暇を導入している・・・利用率が高く、効果も大きい制度。
  17. 病気などの場合に、年次有給休暇が追加される(バックアップ休暇)制度がある・・・年次有給休暇の完全取得が促進される。
  18. 短時間勤務ができる・・・柔軟な働き方は、女性の活躍を推進。
  19. 在宅勤務型テレワークを導入している・・・仕事に集中でき、通勤時間分の時間が有効に使用できるため、生産性も向上。
  20. 産業医や保健師との相談制度がある・・・社内の意識も変わる。
  21. 裁量労働制を導入している・・・仕事に責任を持つことが、業務の効率化につながる。
  22. 長時間労働の抑制や年次有給休暇取得促進について、経営会議で取り上げている・・・経営トップのリーダーシップが期待される。
  23. 時間外労働について、全社で目標時間を設定している・・・目標を設定することが、意識を変える第一歩
  24. 長時間労働の抑制や年次有給休暇取得促進について、労使で話し合いの場を設けている・・・労使で話し合うことで、共通認識に立った取組ができる。
  25. 部門間やチーム内で仕事の分かち合い、平準化をしている・・・特定の人や、部門に大きな負担がかからないようにする。
  26. イベントやキャンペーンを実施するなど、年次有給休暇取得の工夫をしている・・・年次有給休暇取得への関心が高まる。
  27. 生産性や品質の向上、業務の効率化に努めている・・・業務効率を上げることは労働時間短縮に直結。
  28. 人材育成に力を入れている・・・スキルアップは従業員のやる気を育て、生産性も高める。
  29. 長時間労働の抑制や年次有給休暇取得について顧客の理解を得るよう働きかけている・・・顧客の理解を得ることで、取組を進めやすくなる。
  30. 労働時間管理がしやすいビジネスモデルに変化させている・・・主体的な労働時間管理が可能になり、取組が大きく前進。

 

事業場外みなし労働制について

2014.02.09

 労働時間の算定が困難な場合に、所定の時間を働いたことにする「みなし労働時間制」の適用は不当として、阪急交通社の子会社「阪急トラベルサポート」(大阪市)の派遣添乗員が、未払い残業代などの支払いを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(小貫芳信裁判長)は1月24日、「業務内容や指示、報告の方法などを考慮すると、添乗員の勤務状況の把握が困難だったとは言えない」として適用を認めず、同社側の上告を棄却した。

  同社に計約31万円の支払いを命じた二審東京高裁判決が確定した。

 以下判決文から要約です。 

  1.  添乗業務について、会社は、添乗員との間で、あらかじめ定められた旅行日程に沿った旅程の管理等の業務を行うべきことを具体的に指示していた。
  2. 予定された旅行日程に、途中で相応の変更を要する事態が生じた場合には、その時点で個別の指示をするものとされていた。
  3. 旅行日程の終了後は、内容の正確性を確認し得る添乗日報によって、業務の遂行の状況等につき詳細な報告を受けるものとされていた。 

 以上のような業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、会社と添乗員との間の業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様、状況等、添乗業務については、これに従事する添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難く、労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえない。

 この判決を受けて、厚生労働省より、事業場外みなし労働制適用に関する通達が出されることが予想され、営業職の時間管理および割増賃金にも大きな影響を与えることが考えられます。

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