ski経営サポートオフィスの社労士コラム

【09:残業代の請求】記事一覧

従業員に時間外労働をさせる場合

2013.08.31

時間外労働・休日労働

労働者は、契約で決められた労働時間分働く義務があります。この契約した労働時間を所定労働時間といいます。この労働時間は原則、1週40時間、1日8時間以内で定めなければいけません。この法律で制限されている労働時間の上限を法定労働時間といいます。

時間外労働といっても所定労働時間を超えて働かせる場合と法定労働時間を超えて働かせる場合を分けて考える必要があります。所定労働時間を超えて働かせる場合を所定時間外労働、法定労働時間を超えて働かせる場合を法定時間外労働といいます。

一方休日についても、労働する義務のある日と労働する義務のない日を決めて契約しています。この契約に基づいて労働義務のない日を所定休日といいます。所定休日は最低でも1週に1日または4週に4日以上なければなりません。この強制される休日の最低基準を法定休日といいます。

休日も契約上労働義務のない所定休日に働かせる場合と法定休日に労働させる場合を分けて考える必要があります。

法定時間外労働させるための条件

法定労働時間と法定休日は労働基準法で定められており、法定労働時間を超えて労働させることや法定休日に労働させることは原則禁止です。これに違反した場合には刑事罰がかせられます。

この禁止された時間や休日に働かせるためには次の2つのうちどちらかの要件が必要です。

  1. 従業員の過半数を代表する者との労使協定がある場合
  2. 非常時災害等で臨時の必要がある場合

労使協定による場合は、労働基準法36条に規定されていて「36協定」と呼ばれています。この36協定を締結し労働基準監督署長に届け出ないと法定労働時間外や法定休日に労働させることはできません。

非常災害等を理由として法定労働時間外や法定休日に労働させる場合は、事前に労働基準監督署長の許可を受けるか事後遅滞なく届け出る必要があります。

割増賃金の支払い

法定労働時間外に労働させる場合には労働させる1時間当たりの賃金に25%以上の割増賃金を加算して支払わなければなりません。

法定休日に働かせる場合には労働させる1時間当たりの賃金に35%以上の割増賃金を加算して支払わなければなりません。法定休日でない所定休日に働かせる場合は、法定労働時間を超える時間に対して25%以上の割増賃金を加算して支払う必要があります。

午後10時から午前5時までの間の深夜に関しては上記の割増賃金とは別に、1時間当たりの賃金に25%以上の割増賃金を加算して支払わなければなりません。深夜業が所定労働時間内の場合は深夜業の割増賃金だけで済みます。

残業代を減らす③

2012.05.05

変形労働時間制度を活用する

1カ月単位の変形労働時間制

例えば、1カ月のうち月初は比較的暇で、月末に業務が集中するなど、1カ月の内で忙しさが違う会社や職場では、1カ月単位の変形労働時間制を採用することで、残業代を抑制することができます。

このような場合月初は休日を多くして1日の労働時間を短く、月末は休日を少なく1日の労働時間も長く設定して時間外労働の時間を短縮します。

変形労期間の法定労働時間の総枠は、暦日数で算出しますので、月初でを短くした分の労働時間を月末の労働時間を長く設定できます。

  • 変形期間の法定労働時間の総枠=40時間×変形期間の暦日数÷7日
暦日数ごとの法定労働時間の総枠
変形期間の暦日数 法定労働時間の総枠
31日 177時間8分
30日 171時間25分
28日

160時間

  • 月末が忙しく、月初が比較的暇である場合、それに合わせた労働日や労働時間を設定し、1週間当たりの平均労働時間を40時間以下に抑えた例
1カ月変形労働時間制の導入例 31日の場合
週数 1週の労働時間 労働日 1日の労働時間
1週目 35時間 日-土 5日間 1日7時間
2週目 35時間 日-土 5日間 1日7時間
3週目 35時間 日-土 5日間 1日7時間
4週目 50時間 日-土 5日間 1日10時間
5週目 20時間 日-火 2日間 1日10時間

合計175時間<177.8時間

1年単位の変形労働時間制

変形期間の法定労働時間の総枠は、暦日数で算出するため、休日数が多くなると、その分1日の労働時間を長くすることができます。

  • 変形期間の法定労働時間の総枠=40時間×変形期間の暦日数÷7日

ですので、1年単位の場合

40時間×365日÷7日≒2,085時間(小数点以下切り下げ)

通常の休みの他、祝日や年末年始、夏季休暇などがあり、上手く活用することで、効率よく労働時間を設定することができます。

1年単位の変形労働時間を採用した場合、対象期間を平均して1週あたり40時間を超えない範囲であれば、1日8時間を超えていても、割増残業代を支払わずに労働させることができます。

その場合の労働時間の上限は次の通りです。

例1: 休日の条件 週休2日 /日曜日、土曜日各52日/祝日12日/年末年始、夏季休暇各3日/合計122日の場合(対象期間1年)
年間労働日 365日-122日=243日
労働時間の総枠 40時間×365日÷7日≒2,085時間
1日の労働時間の上限 2,085時間÷243日≒ 8.58時間(8時間34分)

1日の上限8時間30分

例2:休日の条件 隔週週休2日/ 日曜日52日/土曜日26日/祝日12日/年末年始、夏季休暇各3日/合計96日の場合(対象期間1年)
年間労働日 365日-96日=269日
労働時間の総枠 40時間×365日÷7日≒2,085時間
1日の労働時間の上限 2,085時間÷269日≒7.75時間(7時間45分)

1日の上限7時間45分

  • 対象期間を1年とした場合繁忙期の労働時間の上限を例えば10時間、それほど忙しくない期間の労働時間の上限を7時間として1年で2,085時間以内におさまるようにすれば余分な残業代の支払いをカットすることができます。

ただし、1年単位の変形労働時間制には種々の制限があります。

  1. 1日10時間、1週52時間を超えてシフトを組むことができません。
  2. 対象期間が3か月を超える場合、48時間を超える週を連続させるのは3週以下
  3. 対象期間が3か月を超える場合、48時間を超える週は3か月ごとに各3回以下
  4. 対象期間が3か月を超える場合、1年あたり労働日数は280日以下
  5. 対象期間に連続して労働させることができるのは、連続6日、繁忙期は最大12日

これ以外にも注意点があります。変形労働時間制の導入は、事前に当事務所にご相談下さい。

残業代を減らす②

2012.04.30

固定残業代の導入

固定残業代の導入は、残業代を大幅に減らす上で合法的で有効な手法です。

 

【事例】

株式会社Y(リフォーム販売業)の場合

  • 週40時間労働制
  • 営業社員Aの給与細目 総支給26万円:基本給20万円、職務手当5万円 通勤手当月額1万円

このうち「職務手当」は、営業社員に対して支給される手当であり、営業社員の恒常的な残業をケアする意味合いがありました。

そこで、就業規則(賃金規程)においてこれを「固定残業手当」と再定義し、同時に社員Aとの間で当該固定残業手当を記載した雇用契約書を再度取り交わしました。その結果、社員Aさんについて月々5万円の残業手当が合法的に支払われている状態が整ったことになります。

固定残業手当額から逆算すると、以下の式により、「34.6時間分の残業手当」が支払われていることになります。

基本給20万円 ÷ 173時間(月間所定労働時間)× 1.25 ≒ 1,445円(残業単価)

 5万円÷ 1,445円 ≒ 34.6時間

このアプローチを行うためには

1.就業規則等に根拠があるか

2.労働者本人の同意が得られているか

3.給与明細等の上で固定的残業である旨明記されているか

の三つが特に重要になります。

 

規則の定め方や運用によっては違法と取られる場合がありますので注意が必要です。

固定残業手当の導入は、事前に当事務所にご相談下さい。

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