ski経営サポートオフィスの社労士コラム
激増しているパワハラの相談
都道府県の相談件数
厚生労働省の調査によると、都道府県労働局等に設置されている総合労働相談コーナーに寄せられた「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は年々増加し、平成14年度時点では6,627件でしたが、 平成24年度には5万1,670件に達し、相談内容の中の割合は20.3%でトップになっています。
パワーハラスメントについての経験の有無
過去3年間に「パワーハラスメントを受けたことがある」と回答した者は回答者全体の25.3%、「パワーハラスメントを見たり、相談を受けたことがある」と回答した者は回答者全体の28.2%、「パワーハラスメントをしたと感じたり、したと指摘されたことがある」と回答した者は7.3%。
パワハラをする側とされる側で、認識に大きなずれがあることが分かります。
具体的な例を上げると
身体的な攻撃
- 足でけられる(女性、50歳以上)
- 胸ぐらを掴む、髪を引っ張る、火の着いたタバコを投げる(男性、40歳代)
- 頭をこずかれた(男性、50歳以上)
精神的な攻撃
- 皆の前で大声で叱責。物をなげつけられる。ミスを皆の前で大声で言われる(女性、30歳代)
- 人格を否定されるようなことを言われる。お前が辞めれば、改善効果が300万出るなど会議上で言われた。(男性、20歳代)
- 同僚の前で無能扱いする言葉を受けた。(男性、50歳以上)
人間関係からの切り離し
- 挨拶をしても無視され、会話をしてくれなくなった。(女性、30歳代)
- 報告した業務への返答がない。部署の食事会に誘われない。(女性、30歳代)
- 他の人に「私の手伝いをするな」と言われた。(男性、50歳以上)
過大な要求
- 終業間際に過大な仕事を毎回押し付ける。(女性、40歳代)
- 一人では無理だとわかっている仕事を一人でやらせる。(男性、20歳代)
- 休日出勤しても終わらない業務の強要。(男性、30歳代)
過小な要求
- 従業員全員に聞こえるように程度の低い仕事を名指しで命じられた。(女性、20歳代)
- 営業なのに買い物、倉庫整理などを必要以上に強要される。(男性、40歳代)
- 草むしり(男性、50歳以上)
個の侵害
- プライベートな事を聞いてきたり、相手は既婚者であるにも関わらず独身の私にしつこく交際を迫った(女性、20歳代)
- 交際相手の有無について聞かれ、過度に結婚を推奨された。(女性、30歳代)
- 個人の宗教を、皆の前で言われ、否定、悪口を言われた。(女性、50歳以上)
あきらかにパワハラだと一目瞭然なものもありますが、やっている本人はパワハラだと思っていないかもしれないものもあります。この辺りが認識の大きなずれにつながっているのでしょう。
厚生労働省よると、パワハラとは、
「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為 」
で、上司から部下への行為に限ったものではなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われるものも含みます。
パワハラの種類は
- 暴行・障害(身体的な攻撃)
- 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
- 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切離し)
- 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
- 業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや与えないこと(過小な要求)
- 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
の6つに類型化される。としています。
パワハラ対策
パワハラ対策として企業が行ったもので一番多いのが、、「管理職向けの講演や研修」で、取組実施企業の64.0%で実施され、「就業規則などの社内規定に盛り込む」(57.1%)が続いています。
効果を実感した比率が最も高いのは、「管理職を対象にパワハラについての講演や研修会を実施した」で、実施企業の77.3%で効果を実感しています。
また、「一般社員を対象にパワハラについての講演や研修会を実施した」(70.6%)、「アンケート等で、社内の実態把握を行った」(62.1%)、「職場におけるコミュニケーション活性化等に関する研修・講習等を実施した」(61.2%)などが続いています。
管理職や一般社員に直接的に働きかける取組において、効果を実感している比率が高くなる傾向が見らます。
パワーハラスメントの予防対策には、パワハラについての研修制度などを取り入れ、上司がパワーハラスメントについて理解した上で、部下とのコミュニケーションを行うことにより、パワーハラスメントが生じにくい環境を作り出すことが重要だといえそうです。