ski経営サポートオフィスの社労士コラム

自動車運送業への監督指導と送検の状況

2016.01.16

長野県軽井沢町で不幸なスキーバスの転落事件が起きてしまいました。報道によるとこの会社は、従業員に法定の健康診断を受けさせていなかったということです。

平成27年12月25日付で、厚生労働省から、トラック、バス、タクシーなどの自動車運送業者へ行った労働局と労働基準監督署の監督指導と送検の状況が公表されています。

監督指導状況

労働基準関係違反

これによると、平成26年に監督指導を行った事業所数は、3,907事業所で、その内労働基準関係の法違反がみられたのは、3,240事業所と82.9%にのぼっています。内訳をみると、タクシー(ハイヤー含む)87.3%、トラック83.6%、バス74.4%となっています。

改善基準違反

違反事項については、多い順に、労働時間56.0%、割増賃金24.3%、休日6.4%となっています。

次に改善基準に関しての違反は、3,907事業所中2,373事業所と60.7%で、多い順にトラック66.7%、バス56.1%、タクシー41.0%となっています。

違反事項については、最大拘束時間48.3%、総拘束時間38.3%、休息時間35.3%の順となっていいます。

事例
  1. トラック運転手の事例で、6週間休みが全くとれていない、1か月の拘束時間(勤務時間と休憩時間を合わせた時間)が400時間を超えていた(原則は1か月293時間)
  2. トラック運転手の事例で、1か月の拘束時間が約500時間、その翌月は約400時間、また8時間以上の休息時間を与えていなかった。
  3. バス運転手の事例で、4週を平均して1週間当たりの拘束時間が約80時間以上(原則65時間)で、1日の拘束時間が16時間を複数回超えていた、連続運転時間が4時間を超えていた。
  4. タクシー運転手の事例で、月給を時間あたりに直すと最低賃金を下回っていた。賃金が完全歩合制で、水揚げに応じて支給割合が上がる累進歩合給制になっており、保障給も定めていなかった。

送検状況

また、重大または悪質な違反として送検を行ったのは56件で、トラック40件、タクシー6件、バス3件とトラックが断トツで多くなっています。

事例
  1. トラック運転手の事例で、運転手2名の脳・心疾患(うち1名は死亡)を発生させた事業所では、全体の約9割に当たる70名に対し、1か月100時間を超える残業を行わせており、平均約150時間、最長で220時間を超える残業があった。36協定の限度の120時間を超えており、重大な法違反であるとし、法人と事業主を送検。
  2. タクシー運転手の事例で、脳梗塞を発症した運転手に対し、3か月90時間の残業と56日間連続勤務を含む休日出勤をさせていたことから、重大な違反であるとして法人と役員を送検。36協定も有効なものではなかった。
  3. トラック運転手の事例で、運転手に対して、最大12tの大型貨物自動車の荷台で保護帽を被らずに作業させていた際、荷台から転落し、脳挫傷により意識不明の重体となった。運転者に対し、危険を防止する措置が取られていないことから、重大な法違反として法人と営業所長を送検。
  4. トラック運転手の事例で、高さ3.4mのトラック荷台の屋根の補修作業をさせていた際に、運転手が転落し、死亡した。屋根までの昇降設備はなく、また、転落防止措置もとられていなかったことから、重大な法違反であるとして法人と代表者を送検。

地方運輸局と労働労働基準監督機関が、相互に通報しあっており、合同監督や監査なども始まっています。人材不足や荷主からの要求など難しい問題もありますが、運転手・ドライバーの労働環境の向上か求められています。

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