ski経営サポートオフィスの社労士コラム
【04:労働災害が発生したら】記事一覧
- 2012.01.26
- 業務上・通勤中のケガなどで休業するときは
- 2012.01.25
- 業務上災害と通勤災害の違いは
- 2012.01.24
- 通勤災害について
業務上・通勤中のケガなどで休業するときは
休業(補償)給付
従業員が業務上または通勤中のケガや病気のため出勤できず、その間給与が支給されない場合、賃金の補てんを目的として、労災保険から休業(補償)給付と休業特別支給金が支給されます。
支給要件
支給には、次の要件が必要です。
- 業務上か通勤中のケガや病気の療養ために労働できないこと
- その間賃金の支給が無いこと(一部を受けている場合も含む)
- 待機期間3日間が完了していること
支給額
3日間の待機期間が完了し4日目以降に休業している間に次の金額が支給されます。
- 休業(補償)給付 :休業日1日当たりの給付基礎日額(平均賃金のこと)×60%
- 休業特別支給金 :休業日1日当たりの給付基礎日額×20%
※ 出勤日でない休日でも要件を満たせば支給の対象となります。
待機期間
休業の1日目から3日目までは、待機期間といい、労災保険からの給付は受けられません。待機期間中は、業務上の災害であれば労働基準法に基づいて、平均賃金の60%以上の休業補償を会社が支払わなければなりません。
通勤災害の場合には、このような支払いの義務はありません。
待機期間の注意点は以下のとおりです。
- 所定労働時間内に被災し、すぐに病院に行き、その後労働できない場合、待機期間はその日からスタートします。
- 残業時間中に被災し、すぐに病院に行き、その後労働できない場合は、待機期間は翌日からスタートします。
- 被災の数日後に初めて病院に行った場合は、すでに休んでいても、病院に行った初診日から待機期間がスタートします。
- 待機期間は、出勤日でない休日も含まれます。
- 3日間が連続していなくても通算で3日間あれば待機期間は完了します。
- 通勤災害の待機期間中は、何も支給がありませんので、有給休暇を従業員の申請により使用することは差し支えありません。
その他の注意点
- 通勤災害で療養給付を受けているときは、初回の休業給付から200円徴収されます。
- 就業時間の一部だけ労働した場合は、給付基礎日額から労働した分の賃金を差し引いた額の60%が支払われます。特別支給金はそのまま20%支給されます。
傷病(補償)年金
- 業務上の災害や通勤中の災害により、療養を開始してから1年6か月過ぎてもまだそのケガや病気が治っておらずに、第1級から台級までの傷病等級に該当する場合は、休業(補償)給付に代わって傷病(補償)年金が支給されます。
- 傷病等級に該当しないときは、引き続き休業(補償)給付が支給されます。
- 傷病(補償)年金はケガや病気が治っていない場合に支給されます。これ以上回復が見込めない状態で、障害が残った場合は障害(補償)年金を請求することになります。
以上の給付は黙っていてももらえません。会社を管轄する労働基準監督署に、それぞれの給付の請求をすることが必要です。
業務上災害と通勤災害の違いは
「業務上の災害」になるか「通勤災害」になるかの判断ですが、業務の性質を有するものは、通勤とはならずに業務上として扱われます。通勤災害ではなく業務上災害と扱われるものには、次のようなものがあります。
- 事業主がバスなどの専用の交通機関を用意して労働者の通勤に使用している場合
- 休日等に、特別に会社からの特別命令で呼び出されて出社する途上
- 出張のための出発、帰着の移動
- 赴任の日時・方法が特定され、赴任の旅費が支給される場合の赴任途上
原則として、「業務災害」と「通勤災害」では給付の内容は同じです。提出する請求書の様式や給付の呼び方が異なります。「業務災害」の場合は名称に「補償」という文言が入ります。
例 業務災害 「療養補償給付」
通勤災害 「療養給付」
療養補償
- 業務上災害の場合、労災保険に加入していないと、事業主は、労働基準法により、必要な療養の費用を負担しなければなりません。事業主の故意過失は関係なく、また被災した労働者が退職しても費用負担を続けなければなりません。療養補償は毎月1回以上行うこととされています。
- 業務上災害の場合、業務上のケガや病気のため休業する期間とその後の30日間は原則として、解雇をすることができません。
- 3年を経過してもケガや病気が治らない場合は、平均賃金の1200日分の打切補償を支払う場合、この解雇の制限は解除されます。また災害の補償についても免れることができます。
- 療養開始後3年を経過した日において、労災保険の傷病補償年金を受けている場合や受けることになった場合には、打切補償が支払われたものとみなされます。
- 通勤災害の場合はこのような災害補償や解雇制限はありません。
休業補償
業務上災害の場合事業主は労働基準法により、平均賃金の60%以上の休業補償を行わなければなりません。業務上災害の療養のため休業を開始し場合、4日目から労災保険の「休業補償給付」と「休業特別支給金」が支給されます。ですから、実質最初の3日間について、事業主が休業補償を行うことになります。
通勤災害の場合は、このような休業補償の義務はありませんので、待機期間の3日間に休業補償をする必要はありません。
通勤災害について
「通勤」とは、「労働者が就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くもの」とされています。
- 住居と就業の場所との往復
- 労災保険法の適用事業、通勤災害保護制度の対象となっている特別加入者に係る就業の場所、これらに類する就業の場所への移動
- 上記1.の往復に先行し、または後続する住居間への移動
ちょっとややこしいですが、事例によってみていきましょう。
どこからどこまでが通勤か
出勤する場合でもそれが住居内であれば通勤とはいえません。
一戸建ての場合は家の門を出たところからが通勤となります。マンションやアパートなどの集合住宅の場合は、自宅のドアを出たところからが出勤となります。ですから集合住宅の場合は、共用の廊下や階段でケガをすれば、通勤災害と認められます。
自宅以外からの出勤
長時間の残業や早出出勤のため、交通機関のストによる場合、台風など自然現象の場合などのやむを得ない事情により一時的にホテルなどに宿泊する場合には、このホテルと就業場所との往復中にけがをした場合は通勤災害と認められます。
一方、徹夜で飲酒をしたとか徹夜で麻雀をして、友達の家に泊まったような場合は、やむを得ない事情と言えませんので、通勤とは認められません。
寄り道をしても通勤災害と認められる場合の例
仕事帰りに夕食などの買い物をする場合、買い物中はケガをしたとしても通勤とは関係ないため、通勤災害とは認められません。
しかし、夕食の買い物などの日常生活に必要な行為の場合は、その後の帰路でのケガは通勤災害と認められます。
その他の例
- 出退勤の途中で、独身者が食事に立ち寄る場合、クリーニング店に立ち寄る場合、理容店・美容院に立ち寄る場合
- 公共職業訓練、学校での教育、その他職業能力の開発向上のための教育訓練を受ける場合
- 選挙の投票による場合
- 病院で診察や治療を受ける場合
- 介護の必要な父母・祖父母などの一定の家族を介護するために立ち寄る場合
寄り道後に通勤災害と認められない場合の例
- 麻雀を行う場合
- 映画館に行く場合
- 居酒屋やバーなどで飲酒する場合
- デートをする場合
もっとも、トイレの利用、公園での短時間の休憩、たばこ休憩、雑誌等の購入、ジュースの立ち飲み、軽く渇きを癒すためのお茶・ビールを飲む等の行為は中断・逸脱とはみなされません。
飲酒の場合は判断が難しいですが、立ち飲み程度の短時間のものなら逸脱とはならないとされています。
昼休み中でも通勤災害になる場合
昼休みに自宅に戻り昼食を食べる場合などは、午前中の業務を終了して一旦家に帰り、午後からまた出勤するものと考えられますので、通勤災害と認められます。
ただし、昼休みに昼食を外に食べに行くとか弁当を買いに行く場合などは通勤ではありませんので通勤災害とは認められません。
単身赴任の場合
家族の事情で単身赴任している人が、週末に家族のいる自宅に帰り、週明けにそこから出勤して来る場合があります。このような場合、家族のいる自宅から就業場所への間、もしくは一旦赴任先の部屋に戻りそこから出勤する間にケガをした場合、一般的に通勤災害と認められます。
通勤経路・方法を変えた場合
会社に届け出ている通勤経路・方法だけが通勤という訳ではありません。いつもと違う経路であっても通常に用いられると思われるものは通勤と認められます。
鉄道・バス・自動車・自転車・徒歩というように通常用いられる方法ならば、いつも利用しているかどうかにかかわらず、通勤と認められます。
ただし、通行禁止の場所を通行するとか、あきらかに遠回りして出勤するような場合を除きます。
会社に届け出ているかどうか、いつも利用しているかどうかは、通勤災害の認定上は関係ありません。
兼業している場合
別の会社と兼業している人が、最初の就業場所から次の就業場所へ移動する場合、合理的な経路及び方法であれば通勤と認められます。この場合、会社が兼業を認めているかどうかは、通勤災害の認定上は関係ありません。
この場合の移動中のケガは、向かう先の会社の通勤災害となります。