ski経営サポートオフィスの社労士コラム
【09:残業代の請求】記事一覧
- 2012.01.06
- 出来高払い制で売り上げ0の場合,賃金も0にできるか?
- 2012.01.05
- 賃金の支払い方法は
- 2012.01.04
- 賃金になるものは
出来高払い制で売り上げ0の場合,賃金も0にできるか?
完全出来高払い制の労働契約
賃金が出来高払いや請負制によって支払われている場合のメリットは、成果が上がれば賃金が多くもらえるということにあります。しかし成果が上がらなければ、賃金が大幅に減ることになります。
労働基準法第27条では、「出来高払制その他請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じて一定額の賃金の保障をしなければならない。」と規定しています。又保障給は、1時間にいくらと定めた時間給であることが原則とされています。
ですから、売上が0でも、それがそのまま賃金0にはできないことになります。
ただし、労働者の都合による欠勤などの場合の保障を求めるものではありません。
保障給の額
保障給の基準として
- 労働時間に応じて
- 一定額の賃金の保障
となっていますが、労働基準法では、保障給の額については定めていません。
行政通達では
「常に通常の実収賃金を余りへだたらない程度の収入が保障されるように保障給の額を定める」
とされています。
労働基準法は、労働者の最低限の生活の保障をすることにありますので、だいたいの目安は、
休業手当と同じ平均賃金の60%程度の保障が妥当だとされています。
- 就業規則の中に、賃金の決定、計算および支払の方法、賃金の締切、および支払の時期ならびに昇給に関することを定めなければいけませんので、保障給についても、賃金に関する事項として定めておく必要があります。
- パートタイマーにおいても同じ取扱いとなります。
賃金の支払い方法は
賃金支払い方法の5原則
労働基準法では、賃金の支払い方法について、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないと定めています。賃金の支払い時期について、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。
- 通貨で支払う
- 労働者に直接支払う
- 全額支払う
- 毎月1回以上支払う
- 一定期日に支払う
この5原則には、それぞれ例外として認められている事項があります。
通貨で支払う
賃金は通貨で支払わなければなりません。ただし、
- 書面(必要記載事項有)により労働者の同意を得た場合で、労使協定が締結されている場合は、労働者本人が指定する口座に振り込むことができます。
- 賃金支払日の午前10時までに引出が可能となっていることが必要です。
- 賃金支払い日に計算書を労働者に交付することが必要です。
- 通貨払いなので、原則として現物給与での支払いは禁止されていますが、次の場合は現物で賃金を支払うことができます。
① 法令に別段の定めがある場合(現在はありません)
② 労働協約に別段の定めがある場合
③ 厚生労働省令で定めるものによる場合
直接払い
賃金は直接労働者に支払わなければなりません。いわゆるピンハネを排除することが趣旨です。
未成年者であっても賃金を親などに渡すことはできません。ただし、
- 病気など臨時の場合に、使者である労働者の妻子などに支払うことは、差支えないとされています。
全額払い
賃金は、全額を支払わなければなりません。
積立金、貯蓄金などを天引きしたり、貸付金、売掛金と相殺したりすることも認められません。ただし、
- 法令に別段の定めがある場合(所得税、社会保険料、雇用保険料など)と
- 労使協定をした場合には、賃金の一部を控除して支払うことができます。
- 労働者の欠勤・遅刻・早退・労働組合のストなどの労働しなかった限度において、賃金を支払わないことはここでいう控除にはなりません。
毎月払い
賃金は、毎月1回以上支払わなければなりません。ただし、次の場合には適用されません。
- 臨時に支払われる賃金
- 賞与
- 1か月を超える期間の出勤成績によって支給される精皆勤手当
- 1か月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
- 1か月を超える期間ににわたる事由によって算定される奨励加給または能率手当
一定期日払い
賃金は、一定の期日を定めて支払わなければなりません。一定期日とは支払期日が特定され、周期的に到来するものでなければならず、例えば毎月25日というように定めることをいいます。
- 賃金はその支払期日前に支払う必要はありませんが、①出産、②疾病、③災害、④結婚、⑤死亡、⑥やむを得ない事由による1週間以上の帰郷などの非常の場合に、労働者が請求したときは、支払日前でも、すでに働いている分の賃金を支払うこととされています。
賃金になるものは
賃金
労働基準法での賃金とは、
- 賃金、給料、手当、賞与その他名称を問わない
- 労働の対償である
- 使用者が労働者に支払うもの
以上のすべてのものとなります。
基本給、役職手当、職能給、家族手当、通勤手当、住宅手当、歩合給、昼食代補助など名称にかかわらず、実態が労働の対償として支払われていれば、賃金となります。
労働の対償
労働の対償とは、労働者が使用者との関係の下で行なう労働に対して、報酬として使用者が支払うものをいいます。
- 結婚祝金などの任意や恩恵的なものは賃金ではありません。ただし、就業規則・労働契約などであらかじめ支給条件を明確にしている場合は、賃金となります。
- 住宅の貸与など福利厚生施設は、原則として賃金ではありません。ただし、賃金とされる場合もあります。
- 食事の提供は、①賃金の減額が無い、②就業規則等に定められていない、③それによる労働者の利益がわずかである、という3つの条件を満たした場合、原則として福利厚生となります。
- 制服貸与などの企業の設備であるものは、賃金ではありません。
- 通勤定期代は、賃金となります。
- 実物給与とみなされる支給は、賃金となります。
- 労働者が支払うべき税金、社会保険料などを事業主が代わって負担した場合は、賃金となります。
所得税法と労働基準法の違い
所得税法と労働基準法では、賃金となるものの範囲が異なる場合があります。
例えば、事業主が従業員に食事を提供する場合、労働基準法では、労働者より徴収する金額が、実際の費用の1/3以下の場合、その差額が賃金となります。
一方、所得税では、徴収する金額が3,500円以下で、実際の費用の半額以上の場合、非課税となります(昼食代の場合)。